2017年10月22日日曜日

I don't know. は「わからない」か「知らない」か?

English translation

今日は台風がせまっている日本です。台風が来る前から、一週間以上ずっと東京では雨が降っています。普通は雨の音が好きですが、毎日毎日聞いていると、この音も嫌になり、外へ出るたびに濡れるのにもうんざりしています。さわやかな秋晴れの空が恋しいです。

さて、多くの人は今回のテーマを見て、「やっと書くか!」と思っているかもしれません。日本語の勉強を始めてすぐ、「わかりません」="I don't understand." と習ったのに、「わかりません」は "I don't know." としても使われているんじゃないか?どっちが正しいの?みなさん、こう疑問に思ったことがあるはずです。説明が遅くなって、すみません。。。

まずは簡単な点から入りましょう。"understand" については、以下のように考えていいと思います。
I understand. =わかる。(理解している)
I don't understand. =わからない。(理解していない)
複雑なことは "I know." と "I don't know." に対して、「わかる」と「知っている」、「わからない」と「知らない」が使えることです。だから、どっちを使えばいいの?と迷ってしまうんですね。

まず、「知る」は情報を得るということで、「知っている」は情報を持っているという状態を指します。
"I know him." や "I know this restaurant." と言う場合、彼について、またはレストランについて情報があるという意味なので、日本語では次のようになります。
(私は)彼を知っている
(私は)このレストランを知っている
あるトピックについて聞いた/見た/読んだことがある場合は「知っている」を使えばいいと思います。「表面的な情報」があるということです。

一方、"I know what you mean." や "I know how you feel." と言う場合は、私も同じことを経験したから、あなたの気持ちが理解できるという意味が入っていますね。これは「表面的な情報」ではなく、「深さ」が感じられます。そんな場合は「わかる」を使うといいと思います。
(私はあなたの)言いたいことがわかる
(私はあなたの)気持ちがわかる
次の例を比べてみましょう。
① Do you know where he lives? → No, I don't know. 
② Do you know what you are doing? → Yes, I do.  
① 彼がどこに住んでいるか、知っている? → ううん、知らない
② 自分が何をしているか、わかっているの? → うん、わかっている
①には「表面的な情報の有無」だけ、②には「深さ」がありますよね?

では、「情報があるか、ないか」という視点を持って次の例を考えてみましょう。
③このニュースを知っている? → うん、知っている。(情報がある)/ううん、知らない。(情報がない
簡単ですね。
では、次の例はどうでしょうか。
④この辺に駅がありますか? → はい、あります。(駅が近くにあることを知っている)/いいえ、ありません。(駅が近くにないことを知っている)
答えが「はい」でも「いいえ」でも、駅の場所についての情報があるということになります。
そして、もう一つの答えの選択肢は「わかりません」。 これは "I don't understand your question." ではなくて、"I don't know if there is a station nearby." という意味です。それなら、情報がないのだから、「知りません」と答えた方がいいじゃないか?という疑問がわきます。
④この辺に駅がありますか? → さあ、知りませんね
この答えはまちがいではないと思います。ただ、日本人は普通「さあ、わかりませんね。」と言うでしょう。それはなぜか?「知りません」を使うと、「私はその情報がない」と冷たく答えている印象があります。これに対して、「わかりません」を使うと、「駅は近くにあるかもしれないけど、調べていないから、またはこの辺の地理に詳しくないから、答えられない・・・」などという意味が含まれていると思います。「知りません!」(I have no information!) という代わりに、「わかりません」と言って、やんわり「No」と言っているのでしょうか。「魚が好きですか?→魚はちょっと・・・」と言ったり、「明日飲みに行かない?→明日はちょっと難しいな・・・」と言ったりして、はっきり「No」と言わない表現と似ているのかもしれません。

もう一つの例で答えの印象の違いを見てみましょう。
⑤(あなたは)今週末、何をするの? → 知らない。(この質問に関心がない感じ
⑤(あなたは)今週末、何をするの? → わからない。(予定をまだ決めていないから、今は答えられない
最後に、「わからない」と「知らない」の使い分けの簡単なポイントを書きます。"I don't know." の答え方で迷ったら、聞かれた質問の形に注目してください。
  1. ~を知っている?」と聞かれたら(①)、「知らない」で答える。
  2. ~がわかる/わかっている?」と聞かれたら(②)、「わからない」で答える。
  3. "Do you know?" という部分がない質問を聞かれたら(③と④と⑤)、「わからない」で答える。
相手の質問をよく聞いて、それに合わせて答えることは、この場合に限らず大切なポイントです!

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

面白いトピックですね。フォローアップの質問ですが、「わかる」と「わかっている」、または「わからない」と「わかっていない」は、意味が違う気がしますけど、いかが思いますか?「君にはわからない」より、「君には分かっていない」のほうが少々批判がある気がします。同じく、「それはわかっている」より、「それはわかる」のほうが、経験したから同情できるみたいな意味になる気がします。いかがでしょうか?

Minako Okamoto さんのコメント...

コメントありがとうございます。日本語教師の方でしょうか。
時制から考えて「わかる」「わからない」は一般的に理解があるのか、ないのか、「わかっている」「わかっていない」は今、理解しているのか、していないのかを強調しているのではないでしょうか。

英語がわかる:私は英語が話せる
機械のことはわからない:機械について詳しくない
言っていることはわかっている:他の人が今伝えたいことを理解している
あなたは私の気持ちを全然わかっていない:あなたは私の今の気持ちを理解していない

「君にはわからないよ」はあなたの常日頃の行動や性格を考慮すると、これはあなたには理解できないという意味になる。その場合、英語だとYou can't understand this. に近いでしょうか。
「(君は)わかっていないな」は上記のとおりで、英語だとYou don't understand this.

それで、上記のコメントに書かれたようなニュアンスの違いが生まれるのかもしれません。

Unknown さんのコメント...

また面白い投稿を書いていただいてありがとうございます。最近全然コメントしてないんですが、ほぼ毎日岡本先生のブログを読んでいます!岡本先生のおかげで日本語の微妙なところとか、ヌアンスとかを理解できるようになってきました。一ヶ月ほど前に私と友達が文法を勉強できるサイトを作りました。岡本先生のブログからいくつかの投稿を私たちのサイトへリンクをしています。岡本先生のブログがものすごく役に立っていますので、私たちはできるだけいっぱい人を岡本先生のブログへ案内して、コラボレーションしたいと思います。お手数おかけしますが、時間があれば私たちのサイト(bunpro.jp)をご覧いただいて、こちらへ(admin@mail.bunpro.jp)メールをしていただいても宜しいでしょうか。よろしくお願いいたします!

直訳できない "It's a beautiful day!"

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